100万円で縮むのは何ヶ月か

当初3,000万円・35年・0.6%・元利均等のローンを基準に、返済開始から1年・5年・10年・15年・20年が経った各時点で、期間短縮型の繰上げ返済に100万円を入れた場合を計算しました。毎月返済額は79,208円で、期間短縮型なのでこの金額は繰上げ返済の後も変わりません。

投入時期その時の残債残り期間短縮月数1ヶ月あたりの単価減る利息
1年後2,923万円408ヶ月15ヶ月66,667円22万円
5年後2,609万円360ヶ月15ヶ月66,667円19万円
10年後2,206万円300ヶ月14ヶ月71,429円15万円
15年後1,791万円240ヶ月14ヶ月71,429円12万円
20年後1,363万円180ヶ月13ヶ月76,923円9万円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。各時点の残債は返済予定どおりに返した場合の金額で、金利は全期間0.6%に固定しています。

1年後に入れれば15ヶ月、20年後に入れても13ヶ月です。差は2ヶ月しかありません。「繰上げ返済は早いほど効く」という説明から想像するほど、短縮月数は時期によって変わっていません。

なぜ短縮月数が時期で動かないのか

期間短縮型が消すのは、返済予定表の末尾の回です。末尾の回は残債がほぼゼロに近い時期なので、返済額のほとんどが元金で占められています。つまり100万円で何回分を消せるかは、おおよそ「100万円 ÷ 末尾付近の元金充当額」で決まります。

この分母は、繰上げ返済をいつ入れるかではほとんど変わりません。1回目の返済での元金充当額は64,208円ですが、末尾に近づくほど元金充当額は毎月返済額の79,208円に近づいていきます。消す対象が常に末尾の回である点は、投入時期によらず同じです。

厳密には、単価は投入時期が遅いほどわずかに上がります。消す対象は同じ末尾の回でも、その回までの距離が短くなるほど、100万円で肩代わりできる回数が減るためです。それでも表のとおり、動き幅は66,667円から76,923円へ15.4%にとどまりました。

一方、減る利息は投入時期で大きく変わります。表の右端のとおり、1年後なら22万円、20年後なら9万円で、59.7%小さくなりました。繰上げ返済した100万円は、入れた月から完済までの期間ずっと利息を生まずに済む元金です。残り期間が長いほどその効果が積み上がるため、早い方が有利という結論自体は変わりません。

整理すると、同じ繰上げ返済を「縮む月数」で測ると時期の差はほぼ見えず、「減る利息」で測ると時期の差がはっきり出ます。短縮月数だけを見て判断すると、早く入れる価値を小さく見積もることになります。

投入額を変えても単価は動くのか

次に、投入時期を10年後(残債2,206万円・残り300ヶ月)に固定し、投入額だけを変えました。50万円から500万円まで、1ヶ月縮めるための単価がどう動くかを見ます。

投入額短縮月数1ヶ月あたりの単価減る利息投入額に対する比率
50万円7ヶ月71,429円8万円15.6%
100万円14ヶ月71,429円15万円15.4%
200万円29ヶ月68,966円31万円15.3%
300万円43ヶ月69,767円45万円14.9%
500万円72ヶ月69,444円71万円14.1%

このサイトの計算エンジンによる算出値です。10年返済後の残債と残り期間を共通の前提として、投入額だけを変えています。

単価は68,966円から71,429円の範囲で、投入額を10倍にしてもほぼ横ばいでした。短縮月数は投入額にほぼ比例して増えるため、「まとめて入れると単価が安くなる」という性質はこの試算では出ていません。減る利息が投入額に対して何%かを示した右端の列は、15.6%から14.1%へ、投入額が大きくなるほどわずかに下がります。多く入れるほど残債が小さくなり、後から入れた分が利息を減らす余地が狭まるためです。

ここから言えるのは、金額の大小より投入時期の方が効く、ということです。ただし手数料が1回ごとにかかる契約では、小刻みに入れるほど手数料の割合が重くなります。手数料と単価の関係は繰上げ返済の手数料は何円まで見合うかで扱っています。

金利が高いほど単価は安くなる

単価を大きく動かすのは、投入額ではなく適用金利です。当初3,000万円・35年のまま金利だけを変え、いずれも1年返済後の時点に100万円を入れた場合を計算しました。

適用金利1回目の元金充当短縮月数1ヶ月あたりの単価減る利息
0.6%64,208円15ヶ月66,667円22万円
1.1%58,591円16ヶ月62,500円43万円
1.6%53,331円18ヶ月55,556円70万円
2.1%48,425円19ヶ月52,632円98万円
3%40,455円23ヶ月43,478円168万円

このサイトの計算エンジンによる算出値です。借入額・期間・投入時期を共通にして、適用金利だけを変えています。

0.6%なら15ヶ月、3%なら23ヶ月です。金利が高いほど毎月返済に占める利息が大きく、末尾の回で消せる元金も相対的に小さくなるため、同じ100万円でより多くの回数を消せます。単価は66,667円から43,478円へ下がりました。

減る利息の差はさらに大きく、22万円と168万円です。変動金利で適用金利が上がった局面では、同じ100万円の繰上げ返済の効き方がこの方向に動きます。金利水準の予測はしませんが、「もし上がったら繰上げ返済の価値はどうなるか」は条件を入れて確かめられます。

どちらの数字で判断するか

短縮月数と減る利息は、見たい目的が違います。完済年齢を定年前に収めたい場合は短縮月数が直接の指標になります。表のとおり、100万円でおよそ1年強が前に動くので、必要な短縮年数から逆算して必要額を見積もれます。定年後の残債が気になる場合は完済年齢と定年後の残債も合わせて見ると、何年縮めたいのかが決まりやすくなります。

支払総額を減らしたい場合は、減る利息の方が指標です。こちらは投入時期で59.7%も変わるため、「いつ入れるか」が結論を左右します。手元資金の余裕と、繰上げ返済に回さずに置いておく必要のある金額を先に決めてから、残りを投入額として考える順序になります。

なお、毎月返済額を下げたい場合は期間短縮型ではなく返済額軽減型です。方式によって結果が逆転する場面は期間短縮型と返済額軽減型どっちで比較しています。住宅ローン控除を受けている期間中は、残高が減ると控除額も減るため、判断が変わる場合があります。

100万円という単位について

繰上げ返済の最低金額は金融機関や手続方法で異なります。【フラット35】の一部繰上返済では、金融機関の窓口で手続する場合は100万円以上、インターネットサービス「住・My Note」で手続する場合は10万円以上とされており、どちらも手続に手数料はかからないと案内されています(出典: 【フラット35】繰上返済)。

同じ資料では、繰上返済の方法として「月々の返済額は今までどおりの額にし、返済額に応じて借入期間を短縮する方法」と「借入期間は今までどおりの期間にし、月々の返済額を少なくする方法」の2つが示されています。本ページで計算したのは前者です。

民間の金融機関では最低金額や手数料の扱いが異なります。窓口では100万円以上、インターネットでは1円単位や1万円以上という設定もあるため、自分の契約先の条件は返済予定表や会員サイトで確認してください。100万円を一度に用意できない場合でも、少額から受け付ける窓口があれば単価はほぼ変わらずに縮められます。

確認手順

まず返済予定表で、現在の残債・残り期間・適用金利の3つを確認します。この3つが揃えば、同じ計算を自分の条件で再現できます。次に、投入できる金額を決める前に、生活防衛資金として残しておく額を先に取り分けます。期間短縮型の繰上げ返済は毎月返済額を下げないため、投入後も同じ返済額が続く点を前提に考える必要があります。

そのうえで、短縮したい月数から必要額を逆算します。本ページの試算では1ヶ月あたり約71,429円でしたが、適用金利が高いほどこの単価は下がります。自分の金利で計算し直してから必要額を見積もってください。

最後に、金融機関へ申込方法と受付日を確認します。繰上返済日が月々の返済日に限られる契約もあり、申込から実行までに日数がかかる場合があります。住宅ローン控除を受けている年に実行すると、その年の年末残高が下がって控除額も下がるため、実行時期は繰上げ返済は12月か1月かも合わせて検討する余地があります。

よくある質問

100万円で1年以上縮むなら、毎年続ければ35年が20年になりますか

単純に掛け算した年数にはなりません。繰上げ返済を繰り返すと残債と残り期間が変わり、1回ごとの条件が変わっていきます。毎年続けた場合の累積は毎年100万円の繰上げ返済を続けたらで計算しています。

短縮月数が同じなら、いつ入れても同じということですか

同じではありません。本ページの試算では、短縮月数の差は2ヶ月でしたが、減る利息は1年後の22万円に対し20年後は9万円で、59.7%小さくなりました。支払総額で見ると時期の差は残ります。

期間短縮型を選ぶと、毎月の返済額は下がらないのですか

期間短縮型では毎月返済額は変わりません。本ページの試算でも79,208円のまま、完済が前に動くという結果です。毎月の負担を下げたい場合は返済額軽減型を選ぶ形になります。

変動金利の場合、この計算はそのまま使えますか

適用金利が変わると単価も変わります。金利別の表のとおり、金利が高いほど同じ100万円で消せる回数は増えます。変動金利では見直しのたびに条件が変わるため、現在の適用金利で計算し、金利が上がった場合も別に確認しておくと判断材料になります。

まとめ

  • 100万円を期間短縮型で入れると、10年経過時点では14ヶ月縮む
  • 縮む月数は経過1年と20年で2ヶ月しか違わない
  • 1ヶ月縮める単価は投入額ではほぼ動かず、適用金利で大きく動く
  • 減る利息は投入時期で59.7%変わるため、総額で見るなら早い方が大きい