借り換えで住宅ローン控除はどう変わるか
借り換えの試算では、金利差と諸費用だけが比べられがちです。 しかし住宅ローン控除が残っている人の場合、控除の減少額が諸費用を上回ることがあります。 ここを入れずに計算すると、損得が逆に出ることがあります。
1. 返済期間が10年未満になると、控除の対象外になる
住宅ローン控除には「償還期間10年以上」という要件があります。 借り換えのときに返済期間を短くして、10年を下回ると控除が受けられなくなります。
たとえば残り12年のローンを「どうせなら早く返そう」と9年で借り換えると、 その時点で控除は打ち切りです。残り3年分の控除が残っていた場合、 年20万円の控除なら60万円を失うことになります。金利差で取り返せる額を超えることは珍しくありません。
なお「10年」は借り換え後の契約上の返済期間で判定されます。 繰上げ返済(期間短縮型)の結果として10年を切った場合も対象外になります。
2. 諸費用を上乗せして借りた分は控除の対象外
控除の対象になるのは住宅の取得のための借入だけです。 借り換えの諸費用を新しい借入額に上乗せした場合、その上乗せ分は対象になりません。
借り換え後の借入額が借り換え直前の残高を上回るときは、次の割合で按分します。
控除対象の割合 = 借り換え直前の残高 ÷ 借り換え後の借入額
残債2,500万円のローンを、諸費用80万円を上乗せして2,580万円で借り換えた場合、 控除の対象になるのは年末残高の約96.9%です。手出しが減る代わりに、控除も少し減ります。
3. 借り換えで残高が減れば、控除額も減る
控除額は年末残高 × 控除率で決まります。 借り換えと同時にまとまった額を返済すると、その分だけ年末残高が下がり、控除額も下がります。
控除率が適用金利を上回っている間は、繰上げ返済を急がない方が有利になる場合があります。 たとえば適用金利0.475%・控除率0.7%なら、返済を早めて減らせる利息より、失う控除の方が大きくなります。 控除期間が終わってから繰上げ返済に回す、という判断が成り立ちます。
控除額には2つの上限がある
控除額は次の順で頭打ちになります。試算ツールでは両方を反映しています。
- 借入限度額:年末残高がこれを超えても、超えた分は計算に入りません。 限度額は入居年と住宅の区分(認定住宅・ZEH水準・省エネ基準・その他・中古)で変わります。
- 納めている税額:控除は「納めた税金が戻る」制度なので、 その年の所得税額を超えて戻ることはありません。所得税で引ききれない分は住民税から引かれますが、 こちらにも上限があります。
このため、年収が低めの方や扶養控除などが多い方は、 計算上の控除額(年末残高 × 控除率)を満額受け取れないことがあります。 「限度額いっぱいまで借りた方が控除で得」という話が、必ずしも当てはまらないのはこのためです。
借り換えのときに確認すること
- 控除はあと何年残っているか
- 借り換え後の返済期間は10年以上あるか
- 諸費用を上乗せするか、現金で払うか
- いまの控除額は満額受け取れているか(所得税額で頭打ちになっていないか)
試算ツールでは、この4点を入力に含めて、 控除の減少分を差し引いた実質的な損得を出しています。
手続き上の注意
借り換えをしても、要件を満たしていれば控除は引き続き受けられます。 ただし控除期間そのものは延びません。当初の入居年から数えた年数のままです。
また、借り換えた年は年末調整だけで済まない場合があります。 必要書類は借入先と税務署で確認してください。
本ページは制度の考え方を整理したもので、税務上の助言ではありません。 控除率・借入限度額・対象要件は税制改正で変わります。 適用の可否と金額は必ず税務署または税理士にご確認ください。 制度の基準:2026年8月時点の制度基準